Behind the shadow
目を開けると、白い天井が見えた。
「起きたかい」
ひょいと現れたのは、口ひげを生やしたお医者さん。
「痛いところや具合の悪いところはないかい? 特に外傷はなかったが血まみれだったからね、念のためしばらく大人しく……」
「あの、スマブラ屋敷ってどこですか?」
「……ん?」
「そこにネスって子がいて、私の知り合いなんです。会いに行かなきゃ」
お医者さんに訊くと、何故か苦笑いをした。
「だったら、次からは庭からじゃなく門から入ってきてくれないかい?」
「……え?」
「ここがスマブラ屋敷だよ。ちなみに医務室。……君は?」
「私は……ウィルです」
「ウィル、ね。分かった、ネスを呼んで来よう。しばらくここで待っていなさい」
お医者さんが部屋を出て行ってすぐ、いきなり強い眠気に襲われたウィルはそのままベッドに倒れ込んだ。
「ウィル! ……あれ、寝てるの?」
医務室に飛び込んだネスは、ベッドでぐっすり眠るウィルの姿に拍子抜けしたように佇んだ。
「疲れているんだろう。寝かせてやりなさい」
ネスの後に入って来たドクターがそっとドアを閉めた。
「うん。……どうしたの?」
少し声をおさえて問いかける。
「庭に倒れていたのをサムスが見つけたんだよ。彼女が運んできて、服を適当に着替えさせて寝かせてある。……とりあえず異常はないようだから安心しなさい。ネスに話があるみたいだから、起きるまで付き添ってやってくれないか?」
「うん、分かった」
「さて、私はコーヒーでも飲みに……」
「ドクター! 急患です!」
ドクターが立ち上がった時、カービィを抱えたリンクが飛び込んできた。
「どうした?」
「食材の一部にカビが生えていたので、処分しようとより分けていたら、目を離した隙にカービィが食べてしまって……」
「カービィに薬は効くかね? まあ、とりあえず様子を見よう。リンクは仕事に戻っていいよ。……あ、後コーヒーを淹れてくれないか?」
「分かりました」
「ドクター、傷の治療をお願いします。うっかり剣先がかすってしまって……」
「分かった。消毒液は……」
「ドクター……すまんが胃薬をくれ……」
「あー……ネス、悪いが手伝ってくれ」
「分かった」
急に騒がしくなった医務室。
ウィルの眠りを妨げないように、ドクターはカーテンを二重に閉めた。
……忌々しげに鳴った舌打ちには、誰も気付かなかった。
「ねえドクター、これって一体何の役に立つの? 調整は一応終わったんだけど」
サムスがテレビカメラのような奇妙な機械を持って来た。
「ああ、それはウィルス発見器だ。本来はウィルスを発見するための機械だが、意外にストライクゾーンが広くてね。寄生虫とか胎児とか、そんなのも見つかる」
「……おっそろしくアバウトね」
「ね、それでカービィ見てみていい?」
ウィルの枕元に座っていたネスが話に入ってきた。
「いいよ」
「ありがと」
カービィに発見器を向けて、スイッチを入れる。
「……!?」
途端、声にならない悲鳴をあげて、ネスが機械を放り出した。
「な、何が映ったんだ?」
ドクターが訊ねるが、ネスは首をぶんぶん左右に振るだけで何も答えない。
「ったくもー、直したばっかりなんだから丁寧に扱いなさいよ。……ん?」
モニターに映る奇妙な影に、一瞬また壊れたのかとも思ったが、ドクターやネスを映しても特に異常は見当たらない。
「ねえドクター、これって……」
「うん?」
ドクターとサムスは、モニターを見て目を見合わせた。
「う、ん……」
ようやく医務室が静かになった頃、ウィルがゆっくりと目を開けた。
「ウィル!」
「ん……あ、ネス」
「……さて、私はコーヒーでも飲みに行くかね。何かあったら呼びなさい。リビングにいるから」
ドクターは笑って医務室を出ていき、ネスとウィル2人だけが残された。
「ウィル、大丈夫? どこか痛いとこはない?」
「うん、大丈夫よ」
ウィルは笑って上体を起こした。
「ドクターがね、今日1日は念のため大人しくしてなさいって。だから、今日はここに泊まってね」
「うん」
「で……僕に用事って、何?」
「うん……」
ウィルは俯いた。
「……最近ね、私の周りで変なことばっかり起こるの。物が壊れてたり、人がケガしてたり。だから怖くなって……でも他に何とかしてくれそうな人もいなくて……」
「それって……どんな風に? もしかしたらみんなも協力してくれるかもしれない」
ネスが身を乗り出す。
「あの、ね……」
ウィルが口をネスの耳元に近づけて囁く……と思いきや、そのままの態勢でネスにもたれかかった。
「え、ウィル!? 大丈夫!?」
ネスは慌ててウィルの背中を叩く。
と、不意に感じた冷たい妖気にぞくりと背を震わせた。
(え、何……コレ……)
硬直したネスを包み込むように妖気はゆっくりと広がり……
ウィィィィン!
突如ネスの背後からけたたましい機械音がして、ふわりと風がその方向に吹いた。帽子が飛ばされそうになり、ネスは片手でつばを押さえた。
――うぉおぉぉぉぉ!――
ゾッとするほどおぞましい声を響かせ、何かが吸い寄せられていく。嫌な空気が薄れていき、ネスはほっと息をついた。
やがて、音が止んだ。
「大丈夫か? ネス」
ネスが振り向くと、そこには赤い大きな掃除機を持ったドクターが立っていた。
「う、うん。……あ、一体何が……」
「要するに、その子は悪霊に取り憑かれてたってわけ。で、今ネスに取り憑こうとしたところを吸い込んだの。……幽霊吸い込むって、一体どんな掃除機よ」
「いいじゃないか、便利で」
「……そういう問題?」
サムスは苦笑した。
「じゃあ、ウィルは……」
「もう大丈夫だ。ただ、やっぱり負担は大きいようだから、しばらく安静にした方がいいだろう」
「……よかった」
ネスは安堵のため息をついて、ウィルをそっとベッドに寝かせた。
後書き
……うわー。意味不明ー。
ウィルことWill'windさんの依頼作品ですが……これシリアスじゃないよな……。
遅れまくったあげくにこんなのしか書けなくてごめんなさい〜。
返品は可能ですので……。
……そーいや一体何が映ったんだろ? カービィ映した時に。