Fighter's stance


腹の底まで震えるような、地鳴りを思わせる声を耳にしたマリオは呟いた。
「近い……か」
「ああ」
身の丈ほどもある大剣を背から引き抜き、リオンがそれに応えた。
「リオン、あの作戦でいくぞ」
「ああ」
色違いの瞳の、赤い右目を瞑ってリオンは笑った。
「……いくぞ!」
「おうっ!」
2人は一斉に駆け出した。
「ていっ!」
「やあっ!」
先手必勝、2人はギガクッパの鼻先にダッシュの勢いを乗せた一撃を放つ。
「グォウッ!?」
ギガクッパは呻いたが、無論この程度では大したダメージなどない。
「よしっ、このまま突っ切るっ!」
二手に分かれてギガクッパの脇をすり抜け、急な崖を駆け降りる。ギガクッパの吐く灼熱の炎に背を炙られながらも、2人は下の地面に着地しさらに走る。
「リオン! 分かってるよな!」
「任せとけ!」
マリオが横にそれ、リオンは後ろ手にファイアボールを投げつける。マリオのものとは逆に上昇する青いファイアボールは、ちょうど巨大なギガクッパの顔に当たった。
「ガルゥ……!」
ギガクッパはとっさに手で払ったが、気分がいいはずもない。
「こっちだ、デカブツ!」
さらにいくつかファイアボールを放ち、リオンはぐっとスピードを上げる。意外に知られていないが、大剣使いは普通の剣士よりも素早さを要求されるものなのだ。
「グァアアア!」
ギガクッパも巨体に似合わぬスピードでリオンを追いかける。殆ど互角なので追いつかれはしないが、反撃もできない。
(……っし、このあたりか)
しばらくそうやって不毛な追跡劇を繰り広げた後、リオンはいきなり空中に飛び上がった。ギガクッパは急ブレーキをかけるが止まりきれず、リオンはそのままギガクッパの背後に回り込んだ。
「ハアッ!」
気合い一閃、甲羅ではなく尻尾の部分を狙って剣を叩きつける!
「ガァアアアッ!」
血をしぶかせながらも、ギガクッパは鋭い棘の並んだ尻尾を振り回す!
「うおっ!?」
何とか剣で受け止めて直撃は免れたものの、ウェイトで負けるリオンは軽々と吹き飛ばされる。無理矢理踏みとどまって、再びダッシュして間合いを詰める。
……と、ギガクッパの姿が消えた。
「な?」
かげった陽に嫌な寒さを感じ、リオンはとっさにその場を飛び退いた。

ズガァッ!

まさに間一髪、ギガクッパの巨体がリオンのいた場所にクレーターを作った。
(……うおー、こんなん食らったら死ぬー)
空より少し淡い色の髪が燃え上がるようになびき、リオンの背を快感にも似た戦慄が駆け抜けた。
「せいっ!」
気合いと共に、次は足を狙って大剣を繰り出す。しかしこれはかわされ、逆に鋭い爪が振り降ろされる。受けると力負けすることはさっきで身に染みているので、リオンは体をひねってそれをかわした。お互いに攻撃は当たらず、しかし体力は明らかにギガクッパの方が上だ。
(……まだかっ?)
リオンが焦りだした時。
「リオン! いいぞ!」
少し離れた所からマリオが顔を出し、リオンに手を振った。
「オッケイ!」
リオンは後ろに跳ぶと見せかけて逆に前へ走り、ギガクッパの脇をすり抜ける。振り向かれるより早く甲羅の棘に手をかけよじ登る。
「今だ!」
マリオが手にしていたロープを引く。

……ドドドド……!

まるで雪崩のように、白い砂と黒い岩でできた土石流が押し寄せてくる!
「ハッ!」
ギガクッパの背中を蹴って、リオンは土石流の範囲から逃れた。……が、僅かに距離が足りない!
(しまった!)
「リオン!」
と、マリオがリオンの手を掴んでぐいと引き寄せた。リオンは、何とか安全地帯に足をつけた。
「ありがとな、助かった」
土石流に巻き込まれ流されていくギガクッパの怒号を聞きながら、リオンは剣を収めた。
「このくらい当たり前だよ」
「……あ、ところでさ」
「何だ?」
「あの辺って、町か何かなかったっけ」
リオンが指差したのは、ちょうどギガクッパが流された方向。
「……」
「……」
「……いくぞリオン!」
「おうっ!」
2人はまた走り出した。





後書き



らいりおさんの依頼「VSギガクッパ」でした。
……その割にあんまり戦ってないな……しかもこんなオチありかよ。
さらに例のごとくタイトルは適当です。
時間かかりまくった割にはごちゃごちゃな代物ですが、どうぞ。文句は甘んじて受けます。らいりおさんからのみ(ぉぃ

ちなみにリオンイメージは顔はマーカライン、装備は(剣以外は)エキューです(分かるか
傭兵風で露出が高いといったら絶対エキューでしょ! だって肩丸見えなんですよ!? 鎖骨なんですよ!? 鎖骨!(しつこい)