Operation“Matchmaker”
パチッパチッとサムスの手が様々なスイッチを操作し、それに応じていくつものモニターが様々な光景を映す。
『こちらフォックス。エリアα、全セッティング完了』
『ネスだよ。僕らの方のセットは終わり〜』
『マルスです。作業は全て終わりました』
次々に報告が入る。
「分かったわ。今のところは現状維持。ターゲットはもうすぐ……」
『マリオだ。ターゲット確認』
サムスが通信に応えている最中、マリオの一報が飛ぶ。
「来たわ。いい?くれぐれも気づかれないように」
『了解!』
『OK!』
『分かりました』
「マリオ、ピカチュウのスタンバイは?」
『いつでもOKだよ』
「なら行かせて」
『OK!』
全ての通信を終え、サムスは後ろを振り向いた。
「準備は万端、後の指示はよろしく頼むよ」
「もちろん。この作戦、必ず成功させてみせるわ」
ピチューを抱いたピーチはにっこり笑った。
「作戦名『月下氷人』……始動よ」
そのカフェの一角で、ゼルダはぼんやり座りながら空を見上げていた。
装飾品の類は一切身につけていないのだが、それが寧ろ彼女の可憐さを強調している。そんな可憐な美少女が物思いにふけるかのようにほおづえをついている姿は、まるで一枚の絵のようで、誰もが声をかけてこの構図を崩すのを躊躇った。
……いや。
「ゼルダ!」
声のした方を見ると、丁度リンクがカフェに入ってくるところだった。今日は普通の服を着ている。
「ごめん、遅くなって」
「気にしてないわ」
無造作にくくった金髪が跳ねている事や、少し早めの息遣いからかなり走って来たのが分かる。ゼルダは、その努力に免じて遅刻を見逃す事にした。
「でも珍しいわね、リンクが遅刻なんて。どうしたの?」
「出る時に、マルスさんとロイさんに会ってね。コキリ服ばかりじゃなくてたまには他の服を着てみるといいって言われて、着替えさせられた」
「そう」
ゼルダは納得した。
「ところで、用事って何だい?」
アイスティーのレモンをストローでつぶしながら、リンクが訊いてきた。
「ピーチ姫に映画のチケットをいただいたの。だから、一緒に見に行こうと思って」
「ふぅん。映画って何だい?」
「私も良くは知らないわ。何でも、大きな『てれび』を皆で見るんですって」
「楽しいのか?」
「さあ。でも、折角のいただきものだし」
……電化製品のないハイラル出身の2人だ。この程度は大目に見よう。
「どこでやるんだ?」
「えーと、あの緑色の屋根の建物でやるんですって」
「へえ。じゃあ、見に行こうか」
「ええ」
気付いてくれない彼の様子に、ゼルダは苦笑しながらティーカップを傾けた。
「マルス達、いい服を選んだわねー。リンク、なかなかいい男になってるわ♪」
モニターの前で、ピーチは楽しそうに笑う。
「あの青臭いガキがか?」
その後ろでクッパとチェスをやっているガノンが鼻を鳴らした。
「見た目は完璧、立派な騎士様よ。あの2人に任せて正解だったわ〜」
「ま、多分デートだって事に気付いてないだろうけど」
「サムス、それ言っちゃおしまいよ。それを何とかする作戦なんだから」
そう、今スマブラメンバー達は『リンクとゼルダを恋人同士にする』そのためだけに持てる全ての技術と能力と機材を駆使している。ンな大袈裟な、と思うかもしれないが、日頃お世話になっているリンクへのささやかな恩返しと、健気に努力をするゼルダを応援しようという、彼らにとっては十分な理由があるのだ。スマブラメンバー達に、常識は通用しない。
「……あ、移動するわ。サムス、ピカチュウに指示して」
「ピカチュウ、2人を追って。屋根の上から、気づかれないようにね」
『ピカ!』
ピカチュウの返事がして、モニターの1つの映像が動いた。陽光をはね返す窓ガラスに、ヘッドセットをつけたピカチュウの姿が映る。
「映画館に向かってるわ。ミスターに連絡を」
「分かった」
サムスはキーボードを叩き出した。
「まずは第一ステージよ。ミスター、しくじらないでね」
「……何か、俺達見られてる」
「ハイリア人が珍しいのよ。私達だけだから」
「なるほど」
リンクは納得し、それでも視線からゼルダをかばうように少し位置を変えた。
……多少はそれもあるだろうが、普通美形のカップルが仲良く寄り添って歩いているのに視線が行かない方がおかしい。2人して、その方面には鈍いようだ。
映画館に着き、チケットを渡して中に入る。受付がため息をついて2人を眺めたが、これまた一向に気付く様子もなくポップコーンを買いに行った。
「映画を見る時は、ポップコーンとコーラを買うのが決まりなんですって」
「でも、ゼルダはコーラ好きじゃないだろ」
「ええ。だから紅茶にしようと思うんだけど」
「……アイスティーしかないな」
「そうね」
ポップコーンの袋とアイスティーのコップを持って席につく。チケットは指定席、前から3列目の真ん中というベストポジションを指定していた。
「かなり大きいな」
「よかったわね、真ん中で」
他愛もない話をするうちに室内は暗くなり、映画が始まった。内容はもちろん恋愛モノ、カップルで見るのを推奨されるストーリーだ。
『ねえ、私達……ずっと一緒にいられるよね?』
『ああ、もちろんさ』
姫君と云えど女の子、ゼルダは結構真剣に映画に見入っていた。
その肩に、ずしりと金色がのしかかる。
「……リンク?」
呼んでみるが返事はない。くぅくぅという小さな寝息も聞こえてくる。淡く照らし出される寝顔は、何だか子供みたいで可愛かった。
「もう、リンクったら」
苦笑して、ゼルダはリンクに寄り添った。
映画の中の恋人達のように。
「リンク、寝てるみたい」
G&Wの打ってくるモールス信号(古っ!)を変換しながらサムスが苦笑した。
「まあ、リンクだからね」
「でも、ゼルダにもたれかかって寝てるみたいよ」
「あら、それなら上出来。普通は逆だけど」
そう、銀幕の下にいるG&Wが文章のみで2人の様子を中継しているのだ。意外に文才があるらしい。
「……あと30分ね。ネスにつないでくれる?」
サムスは無言でスイッチを押した。
『何?』
「映画、あと30分で終わるの。そっちはどう?」
『カービィとリンクがアイス食べたいって』
「買っていいわよ。経費扱いにしてあげる」
『ありがとう。……そろそろ準備する?』
「もう一度連絡するから、その時に準備して」
『分かった。じゃあね!』
ネスは通信を切った。間髪入れず通信が入る。
『こちらファルコ。メシ食っていいか?』
「いいわよ。でもヨッシーにお腹いっぱい食べさせないでね。すぐ寝るから」
『了解』
『ピーチ姫、サムス、バッドニュースだ』
マリオからも通信が入る。
『ザコ敵を発見した。そいつは叩いたが……多分もっと来る』
「あいつらは、1匹いれば30匹だもんね」
サムスよ、それはゴのつく害虫だ。
「ガノンとクッパをそっちにまわす。何としてでも街に入れないで」
『もちろん』
「……という訳なの。2人とも、行ってくれる?」
ピーチが尋ねると、2人の大魔王はゆっくりと立ち上がった。
「いいだろう……」
「退屈しのぎにはなるかもな」
クレジットが終わっても起きなかったので、ゼルダはリンクを揺すり起こした。
「リンク、起きて」
「ん〜……」
しばらく抵抗していたが、やがてリンクは起き上がった。寝起きのトロンとした瞳を眩しげにしばたく。
「もう終わったの?」
「ええ。……いつから寝てたの?」
「最初の音楽が終わって、女の人が走ってるあたりで」
「それじゃ殆ど最初じゃない」
ちなみにオープニングが終わったあたりである。
「でも何か久しぶりだな、昼寝したのって」
こきこきと首を鳴らすリンク。彼も剣士だ、穏やかそうに振る舞っていても他人に隙は見せない。それが、他人にもたれかかったのにも気づかない程に熟睡していたとは。
(信頼されてるのかな、私)
何となく嬉しくなって、ゼルダはくすりと笑った。
『ピィカ、ピ!』
ピカチュウカメラの映像が動き、映画館を出るリンクとゼルダを映し出した。
「サムス、ネスとフォックスに通信を……」
『ピーチ姫、大変です』
サムスが2人に通信を入れようとした時、マルスから通信が入った。
「どうしたの?」
『ええ。ロイとドンキーが、普通のバナナとチョコバナナのどちらを買うかでもめている間に新聞を読んだのですが……』
「……両方買えばいいじゃないの」
サムスが呆れたように呟く。
『…………。ああ、そうですね』
ポンッと手を打つ気配。
『じゃあそう提案してみます。サムスさん、ありがとうございます』
「……ってマルスっ! ちょっと待っ……」
プツッ。ツー、ツー、ツー。
「……何のために通信してきたのよーっ!?」
サムスの怒りは、しかしマルスには届かなかった。
「ねえリンク、これ似合うかしら?」
「う〜ん、もう少し深い色がいいと思う」
映画館を出た2人は、出店の多い地区に足を運んで、ショッピングを楽しんでいた。
「そうかしら? あまり暗いと重い感じがするんだけど」
「ゼルダに水色は似合わないよ。こっちのピンクのは?」
「ピンクばかりというのもね」
少し考え、結局ゼルダは手にしたブレスレットを元の場所に戻した。
「ゼルダ、これは?」
リンクが放ってきたものを受け止めると、
「……ドロップ?」
「ゼルダ、甘いもの好きだろ。これは色も綺麗だからいいんじゃないか?」
ガラス瓶に入ったドロップは、様々な色に輝いてまるで宝石のようだった。
「綺麗……」
「気に入った? よかったぁ」
リンクはにこっと笑った。その無邪気な笑顔を向けられて、思わずゼルダは頬を赤くした。
「あ、そうだ。他の人にもお土産……」
リンクがそう言った時、いきなり空がかきくもったかと思うと、激しい風雨が襲いかかってきた。
「きゃあ!」
「ゼルダ!」
リンクはあたりを見回し、少し離れたカフェに避難する事にした。
「しっかりつかまって!」
リンクはゼルダの手を握り、カフェに向かって走った。途中何度かはぐれそうになったが、何とかカフェに逃げ込めた。
「大丈夫?」
「ええ、何とか……」
幸い、リンクの行動が早かったためずぶ濡れにはならなかったが、それでも少しは濡れてしまっている。
「しばらくここで雨宿りしようか」
ゼルダの髪をハンカチで拭きながらリンクが言った。
「そうね。……でもすごい雨。まるで『嵐の歌』でも吹いたみたい」
「そうだな。ま、そのうち止むだろ」
「……もう大丈夫」
「2人とも喫茶店に逃げ込んだわ」
双眼鏡を構えたポポとナナが、後ろのネス達に聞こえるように言った。雪山登山家だけあって、この程度の嵐では大して動じない。
「……ふぅ……」
“……終わったか……” ネスとミュウツーは、共同ではったバリアを解除した。
「もうおしまい?」
その中心にいたリンク――こちらは子供の方だ――がオカリナを下ろして尋ねた。
そう、この嵐は子供リンクがおこしていたのだ。ネスとミュウツーがオカリナの音が聞こえないようにバリアをはり、タイミングはアイクラ達が指示した。
「でも、リンクも気を使いすぎよね。何もデートの時にまで私たちにお土産買わなくてもいいのに」
「リンクらしいけどね」
ナナとポポは双眼鏡の水滴を拭いながらそんな話をしている。
「ところで、この嵐はいつ止むの?」
「そのうち」
リンクはあっけらかんと答えた。
「ま、こっちの任務は無事終了。連絡入れようっと」
ネスは携帯を手に取った。
やがて嵐は止み、雲間から金色の陽光が差し込んだ。
「じゃあ、行こうか」
何とか服が乾いた2人は、カフェを後にした。
流石にもう出店はなく、2人は何となくぶらぶらと街を歩いていた。
「……ねえリンク、街外れに見晴らしのいい丘があるんだけど、行ってみない?」
「へえ、いいね。どこだい?」
「こっちよ」
ゼルダの案内で街を歩く事30分、丘の麓にたどり着いた。
「……休憩してから登ろうか」
「そ、そうね」
息の上がったゼルダをベンチに座らせて、リンクは自販機でジュースを買ってきた。
「ありがとう」
ゼルダがジュースを飲んでいるのを横目に、リンクはあたりをキョロキョロと見回している。
「どうしたの?」
「いや……ファルコンさんか誰か、知り合いがいたような気がして」
ゼルダも見回したが、犬の散歩をしている人や走り回る子供らしか見当たらない。
「気のせいよ」
「ん〜……そうかもな」
リンクとゼルダが座るベンチから少し離れた茂みで、ファルコンが呆れたように呟いた。
「何であれだけの距離で気付くんだよ」
「全く、こんな所だけは鋭い奴だ」
ゼルダに声をかけようとした男を適当に縛って、ファルコも頷いた。
「こちらフォックス。ターゲットは丘の麓で休憩中」
フォックスはその隣で通信を入れていた。
『登るときには連絡して。…………ごめん、予定変更。ザコ敵軍団がそっちに向かってる。リンクに気付かれないように止めて』
「何であいつらが……」
『作戦行動と勘違いしてるんでしょ』
「厄介な……。何とかする」
『頑張って』
通信は切れた。
「何だって?」
「ザコ敵出現。ターゲットに気付かれないように止めろ、だってさ」
「ンなムチャクチャな。あのリンクに気付かれないようにだぞ」
「ファルコ、そんな事を言ってもピーチ姫は納得しない。やるしかないんだ。ファルコン、ヨッシー、行くぞ」
そんな騒ぎに気付く事なく、リンクとゼルダは丘を登り始める。
「あら、綺麗な百合ね」
「ゼルダは花好きだもんな」
さして苦労もせず、2人は丘の頂上についた。
「うわぁ……」
リンクは思わず感嘆の声を上げる。
眼下に広がる街並みは、色も高さもバラバラな建物の屋根が重なり合って、まるで積み木を組み上げて作ったようだった。近くから見るとあんなに整っていた街も、離れて見るとこんなに変わるのかとリンクは感心した。
「夜景が綺麗なんですって、この丘」
「へえ」
景色を眺めるのに夢中なリンクの横顔は、まるで子供のようだった。
「ねえ、リンク……」
そうゼルダが呼びかけた時。
「おいこら、兄ちゃん達よぉ」
「こんな所でいちゃつくんじゃねえよ」
『俺達はヤのつく自由業です』と全身でアピールしている数人の男達が、2人を取り囲んだ。
「あら、邪魔者出現。フォックス……」
「フォックスのチームはザコ敵討伐に向かってる。手一杯みたいよ」
ピカチュウカメラの映像を見て、ピーチは眉をひそめた。
「ネス達は?」
「街の反対側にいるから、間に合わない」
「マルス達は……」
「直接攻撃しか出来ないチームだから、確実にバレるわね」
「ピカチュウは……」
「電撃使ったら、カメラが壊れる」
サムスの答えに、ピーチはため息をついた。
「たまには2人っきりにしてあげたかったんだけど。仕方ないわ。ピカチュウ、無視して。リンクがあの程度の相手に負ける訳がないんだから」
『ピカ』
ピカチュウは頷いた。彼も同感だったらしい。
「もう、こんなんで告白とかできるのかしら。あんまりチャンスはないのよ」
「何ですか?」
ゼルダを後ろにかばって、リンクが男達に問いかける。
「何ですか、じゃねえよ」
「てめえら見てるとムカつくんだよ」
「え、と……何か悪い事しました?」
リンクが更に問いかけると、男達は爆笑した。
「こいつ馬鹿じゃねえの」
「いいぜ、折角だから教えてやろう。……存在自体がムカつくんだよ!」
言うが早いか男は殴りかかった。が、リンクはこれをあっさりと受け止め、カウンターで鳩尾に膝を叩き込む。
「ぐふっ!?」
「あ、すいません。つい」
「てめえ、ふざけやがって!」
逆上した男達が、リンクとゼルダに襲いかかる!
「ゼルダこっち!」
リンクはゼルダを抱き寄せ、真正面から来た1人を蹴り倒した。
「早く行って!」
そこに出来た隙間からゼルダを逃がし、ゼルダを狙われないように立ちふさがった。が、剣は抜かない。
「何で剣を抜かないの!? 剣をぬけば一瞬で片付くのに」
「そりゃ、ただのごろつき相手に剣なんて抜きたくないんでしょ。なくても勝てるし、万一怪我でもされたら後味悪いじゃない」
ネス達に丘の麓に来るよう連絡したサムスが冷めた口調で言った。
「でも、リンクは格闘家じゃないし、数の差もあるから……2、3発はくらうわね」
ピカチュウカメラに映される戦闘シーンは、大体サムスの言った通りの結果で終わった。
ゼルダが心配そうに呼びかけながら、リンクに駆け寄る(拾音機能はついていない、残念ながら)。
苦笑してゼルダに答えるリンクの後ろで、最初に倒された男がゆっくり起き上がり――
何とナイフを取り出した!
「! リンク!」
サムスが叫んだが、モニターの中のリンクは振り向かなかった。
「!?」
流石は剣士、リンクはその殺気に気付いて思わずよけようとし――
(……しまった、よけたらゼルダに当たる!)
とっさにナイフを掴んで引き寄せ、男の顎を蹴り上げる。
今度こそ、男は気絶した。
「リンク!」
「大丈夫……かすり傷だから」
「嘘つき! こんなに血が出てるじゃない!」
リンクの左手はもう血まみれだ。
ゼルダはハンカチを取り出してリンクの手を縛った。
「ゼルダ……」
「私だってスマブラメンバーに選ばれてるの、戦えるのよ? どうして私を頼らなかったの?」
「それは……」
「私はもう誰かに助けてもらわなきゃならないお姫様じゃないの、あなたと一緒に戦えるの! 私は、頼りにならないの? 私と一緒には戦えないの?」
ゼルダの目から涙がこぼれ落ちる。
「ゼルダ、聞いてくれ」
リンクはゼルダの目を見返した。
「ゼルダが強いのは知ってる。ただ守られるだけのお姫様じゃないって事も。でも……俺は、ハイラルのためだけじゃない、ゼルダのために剣をとったんだ。ゼルダに降りかかる不幸を消し去るために。……ゼルダが戦ってくれるのは嬉しい。でも、俺だって遊びで剣を持ってる訳じゃない。俺を頼ってくれ。ゼルダが笑ってくれるなら、怪我なんて大した事ない。ゼルダには、傷ついて欲しくないんだ」
「……勝手だわ」
「ああ」
「私だって、あなたに傷ついて欲しくない。笑っていて欲しい。私は、あなたに笑って欲しいから……もうこれ以上傷ついている姿を見たくないから……だからここに来たの。1人で抱え込まないで……。私にも背負わせてよ……」
リンクとゼルダはしばらく無言で見つめ合う。
「……1人で背負い込もうとするのは、お互い様か」
「そうね」
「すまない。でも、こんな時くらいは騎士でいさせてくれ。……愛する姫君を守るためなら、怪我くらいはどうって事はないから」
「私はお姫様は嫌よ? 元からなんだから」
「そこを何とか」
「い・や」
「……そうか。なら……」
次の瞬間、ゼルダはリンクに引き寄せられ、そっと唇を重ねられた。
「!?」
「姫君と騎士じゃないなら、こんなことしてもいいよな?」
リンクは悪戯っぽく笑っているが、照れくさいのか少し紅潮している。
「愛してる……ゼルダ。だから、いつでも笑っていて」
「……」
耳まで真っ赤になったゼルダは、表情を見られまいとリンクの胸に顔を押し付ける。
背中にそっと回される腕を感じて、ゼルダは小さな声で言った。
「リンク……愛してるわ」
ゆっくり顔を上げると、リンクの唇がもう一度降りて来た。ゼルダは目を閉じて、わがままな騎士からの甘い口づけを味わった。
「今回は大成功ね!ちゃんと唇ももらってるし」
と、モニターの前ではしゃぐピーチ。
「早速連絡よ♪ サムス、全員に作戦成功とからかい禁止令を出して」
「いいけど……からかい禁止令は何で?」
「作戦がバレちゃうじゃない。それにね」
ピーチはにっこり笑った。
「からかうのは私の仕事だから♪」
「……鬼……」
サムスの額に、一筋の汗が垂れた。
後書き
予想以上に長くなりました(汗)
かなり大変だったよぅ。
甘めのリンゼル、いかがでしたでしょうか。
実は恋愛モノは苦手なのですよ私。
感想などいただけると嬉しいです。
ちなみに、元ネタはジャッキー・チェンの「タキシード」(だったはず。うろ覚えなんで)。
主人公が目当ての女性をお茶に誘えるように、特殊部隊が頑張るのです。……失敗するけど(爆)
オマケ
「ところでマルス、一体なにが大変だったの?」
「ええ。今日の天気予報のコーナーを見て下さい」
「?」
「何と……今夜は流星群が見られるんだそうです。ロマンチックでしょう」
「……そうだけどさ。あの2人が知ってなきゃ意味ないのよ?」
「…………。ああ、そう言えば」
「こ……この天然……」
END♪