据え膳喰わぬは…


「おおファルコン。丁度いい所に」
車の整備を終え、自室に戻ろうとしていたファルコンは、途中クッパに呼び止められた。
「何だ?」
「悪いが、リビングの人間を片付けてやってくれ。リンク1人ではそこまでやるのは無理だからな」
そういうクッパも、ネスと子供リンクを両脇に抱えて、頭にピカチュウとピチューを乗せている。……全員ぐったりしていて酒臭い。
「酒盛りでもしてたのか?」
「ああ。我輩が目を離した隙に子供らが酒を飲んでな。酔いつぶれるまで散々暴れおった。おかげでリビングはひどい有り様だ」
「……それでやけに騒がしかったのか……」
「そういう事だ。では、頼んだぞ」
「分かった」
クッパはのしのしと歩いていった。



酒ビンが大量に転がってるんだろうなと思いつつ、リビングに向かうと……。
「……うわ」
シャンデリアは落ち、ガラスは割れ、絨毯はビリビリに破け、ソファーやテーブルもひっくり返っているという荒れぶり。はっきり言って、空き巣に入られたってここまで荒れない。
「ほら、ルイージ」
「ぁう〜……兄さん……」
マリオはルイージに肩を貸してやり、ガノンはファルコとフォックスを抱えて運び出していた。ポポはひっくり返ったソファーの下からカービィとプリンを引っ張り出し、リンクとナナはガラスを片付けたりテーブルを直したりしていた。
「……すごい有り様だな」
「ええ。このシャンデリア、3日前に付け替えたばかりなんですけどね」
リンクがため息をついた。
「ファルコンさん、あそこのソファーでサムスさんが寝てますから、部屋に連れて行ってあげて下さい」
「ああ、分かった」
ファルコンがリンクの指差した方に向かうと、サムスがうつ伏せに寝転んでいた。
「おいサムス」
「あ〜、ファルコン……」
トロンとした翠の瞳だけを動かして、サムスはファルコンを見上げた。
「部屋に戻るぞ」
「ん〜」
ファルコンは両腕でサムスを抱き上げた。俗に言うお姫様抱っこだが、幸いにもあたりにはリンクとアイクラしかいなかったためにからかわれることはなかった。
そのままサムスの部屋に行き、サムスをベッドの上に下ろした。
「じゃあ、お休み」
しかし、サムスの手はファルコンの服の裾を掴んで離そうとしない。
「おい、こら離せ……!?」
ぎゅーっとサムスにしがみつかれ、ファルコンはバランスを崩してサムスの上に覆い被さるような体勢になった。
「っおい!」
「みゅう〜……」
ジタバタするファルコンに、すりすりと満足そうに頬ずりをするサムス。豊満な胸が触れて、ファルコンはさらに慌てた。
「おいサムスっ!」
しかし酔ったサムスには届かず、逆に抱き枕よろしく腕を回されてしまった。
「こっこら! いや離せ、脚とか絡めるな!」
間近にサムスの体温と息づかいを感じる。漂う濃い酒精もあって、つい状況に溺れそうになる。
(いかんいかん!)
必死に理性を保つファルコン。しかし、暗がりに仄かに浮かび上がるサムスの無邪気に微笑んだ寝顔が、男の本能をかき立てる。ファルコンは理性を保つために目を閉じて見ないようにした。
「にゅ〜……」
しかし、閉じたら閉じたでしがみついたサムスの体温や心臓の鼓動、熱い吐息を余計鮮明に感じてしまう。
「……どうしろってんだよ……」
ひどく情けない表情で、ファルコンはサムスに添い寝してやる事にしたのだった……。



ちなみに。
翌朝、ちゃんと理性の戻ったサムスが真っ赤になってファルコンをベッドから叩き落としたのは言うまでもない(笑)





後書き



ファルコン生殺しです。
実は生殺しは結構好きなんですよ。最初にハマったガウリナが、生殺しのよく似合うカプだったから(笑)



ちなみに、据え膳喰っちゃったぜバージョンはちゃんと裏にあります。