李下の冠


夜のスマブラ屋敷。



『……ぁ、リンクッ……そこ、あぁん違うわそこっ』
『ん……ここかい?』
『違うっ、もう……意地悪しないで……』
『意地悪ってなぁ……はっきり言ってくれないと分からないだろ。ほら』
『そんな……んぁあっ』
……何やらここだけ妙な声が聞こえる。
たまたまゼルダの部屋の前を通りかかってしまった不幸な人物の名はファルコ=ランバルディ。
(まさか……あの2人……でもそれにしては時間が早すぎ……ってそれ以前に2人共10代だろ!? 早すぎだって! しかも子供達だっているんだぞ!)
半開きになったドアから漏れる甘い声に、持っていた本やら何やらを落として硬直する。
(てゆうかドアくらい閉めろって! それともそういうシュミなのか2人共っ!?)
想像するのも嫌である。
そんな外野の思いをよそに、2人はどんどん行為をエスカレートさせる。
『もうこっちはいいかな。……下行くよ』
『あ、ん……お願い……』
(何か進んでる! いや止めるべきか!? いくら何でも早すぎるし、何か間違ってるし!)
パニクった思考回路を何とか回しまともな結論を出すも、やはり他人の情事の場面に突っ込むのは恥ずかしい。
しかし……しかしである。
ファルコは彼らより年上なのだし、やはりここは恥ずかしかろうとも止めるべきであろう。
ファルコは深呼吸をし、開いているドアから中に飛び込んだ。
「おい2人共っ!」
ファルコの声に、ベッドに横たわったゼルダとゼルダの上に跨ったリンクが同時に顔を向けた。
「あれ、ファルコさん」
「何かありました?」
平然と返す2人は寝間着を着たままで。
「……あ……いや、何やってるのかと……」
「何って、マッサージですよ」
「最近動いてないもので、肩や腰がこってしまって……」
普段通りに返す2人に、ファルコの勢いは弱まる。
「あ、よかったら後でファルコさんもマッサージしましょうか?」
「……いい……」
力なく手を振る。
「そうですか? ならいいですけど。じゃ、続きやろうか」
「ええ、お願い」



仲睦まじくマッサージを再開する2人を置いて、ファルコは深い深いため息をついてドアをきちんと閉めてからその場を後にしたのだった……。





後書き



はい、かなり紛らわしいギャグでした。
ファルコはやっぱり不幸ですね(笑)

いや、一日中机に向かっているだけでも肩こるんです。
私が一度マッサージに連れて行ってもらった時、そこの人が『メチャクチャ固いですね』ってすごく驚いてました。
今でもこってます。誰かマッサージして〜。