Affection to the corrugated box


「ねえ、スネーク」
「……何だ?」
乱闘が終わって解散ムードになった中、カービィがスネークに問いかけた。
「スネークって、段ボール好きだよね」
「ああ」
「あの段ボール、いつも同じの使ってるけど、どこか普通のと違うの?」
「もちろんだ。まあ、少しだけ教えてやろう」
自分の好きなものについての話題のためか、心なしか嬉しそうにスネークが喋り出した。
「まず、一口に段ボールと言っても会社毎に規格やボール紙の強度、表面の模様などは大きく変わる」
「うんうん」
珍しくスネークが饒舌になっているため、興味を持った他のメンバーも近くに集まってきた。
「段ボールの規格は重要だ……比率が悪ければ隠れるのに無駄なスペースを生み出す事になり発見される確率が高くなる。模様もそうだ。色は言うに及ばず、会社のロゴによっては中身を怪しまれてしまう場合もある。紙の強度も、ただ強ければいいという訳ではない。固すぎると携帯に不便になるからな」
全てはバランスだ、とスネークは意外に細かくいい段ボールについて語る。
「……これらのポイントを総合的に見て、最良と思える段ボールはどれか……様々な段ボールを集めて実際に使用した結果、……ん?」
ふとスネークが足元を見ると、足元でカービィがいびきをかいていた。
あたりを見回すと、話を聞いていた他の面々も地面に突っ伏している。
「……まさか、毒ガス兵器か!?」
スネークはとっさに鼻と口を押さえたが、それにしては皆の様子はおかしい。
……と、一人だけ倒れていない人物を発見した。
「ピーチ姫……一体これは……」
「ああ、みんな?」
優雅に紅茶を飲んでいたピーチはにっこり笑った。
「あなたの話を聞いてるうちに眠くなったみたいなの。すごいわスネーク、銃や爆弾で吹っ飛ばす以外に眠らせる技も持ってるなんて!」
「……?」
スネークは訳が分からず眉をひそめた。
「……つまり、皆は特に何かの攻撃をくらった訳ではないんだな。細菌兵器や……」
「最近兵器? 新しい兵器でも出たの?」
年中お花畑なピーチに兵器の話を振るのは無駄だと悟り、スネークは軽くかぶりを振った。
「……いや、無事ならいい。では、またな」
「あ、ちょっとスネーク……あ〜あ、折角ならクッキー食べてってもらおうと思ってたのに」
さっさと姿を消してしまったスネークに、ピーチは小さくため息をついた。



その後、しばらくしてから代表決定戦が開催された。
「よろしくお願いします」
「……ああ」
律義に対戦相手に挨拶するマルスに、スネークは素直に右手を差し出した。
「……ところで、この部屋には段ボールがやたらあるんですが……」
握手を終えたマルスが言った。……確かに、空の段ボールが所狭しと積まれている。
「ああ、ちょっと研究中でな」
「研究ですか? 一体何のです?」
「それは……」
「だあああああっ!」
ゴグァッという鈍い音と共に、いきなりマルスが吹っ飛んだ。そこにいたのは、ハンマーを持ったカービィ。
「……どうした?」
「ダメっ! その話ダメ!」
ブンブンとハンマーを振り回してカービィがわめく。恐らくその話を聞かせたかった相手なのだろうマルスは、不意打ちの衝撃に耐え切れずにフィギュア化してしまっているが、カービィはそれに気付いていない。スネークはため息をついてわめきつづけるカービィのそばを離れてマルスを元に戻した。
「あぁ、どうもすみません……一体どうしたんだ、カービィ」
「段ボールの話はだめっ!」
「え、何で?」
「だって、スネークに段ボールのこと話させたらすごいんだもん! プリンのうたうやピーチ姫の切り札よりすごいんだから!」
とりあえずハンマーをしまったカービィが必死に訴える。が、いまいちマルスには届いていないようだ。
「段ボール……あぁ、そういえばお好きでしたよね」
「あぁ」
わざわざスネークに段ボールの話を振ったマルス。(カービィにとって)最悪の展開だった。
「ボ……ボク用事あるから!」
そのままダッシュで逃げ出す。扉を打ち破っていったが、マルスもスネークも肩をすくめるだけですませた。
「……どうしたんだ、あいつは」
「まぁ、いつものことでしょう。……で、カービィに段ボールの話をしたんですか?」
「あぁ、そうだ。そもそも段ボールというものは……」



……しばらくして代表決定戦が始まったが、何故かマルスは不戦敗という結果に終わっていた……。





後書き



段ボールのフィギュアの説明を読んだ時に思いついたネタです。

前にメタルギアソリッドのパッケージを見た時、敬礼してたスネークの顔がかなりかっこよかったんですけどね。
段ボール好きで何か飢えててって、もしやネタキャラ……?
……すみません嘘ですパイナップルなんか取り出さないであぁぁ安全ピン抜いたぁぁぁ!