全員で集まってトーナメントを開催しようとした矢先、モニターが真っ黒になった。
『お前達……あの時はよくも我を無視してくれたな……』
ようやっと傷の癒えたらしいマスターハンドが恨めしげにモニターに現れた。
「うわ、何だマスターハンドかー」
「一瞬心霊現象かと思った……」
「勝手に出てくんじゃねえよヘタレ右手が」
皆の心温まるコメントに、虚空に“の”の字を書いて拗ねるマスターハンド。しかしすぐに気を取り直し、モニター越しにビッと指を突きつけた。
『この世界とお前達の創造主である我を少しは敬え!』
「やだ」
「肝心な時に役立たずなくせに」
「何寝言ほざいてるんだか」
皆の素早いコメントに、再び虚空に“の”の字を書いて拗ねるマスターハンド。
『うぅ……異界の奴らには好き放題にされるし、こいつらはちっとも言うこと聞かないし、みんなひどいや……』
「自分でそう創ったくせに」
『従順なだけの人形なんぞつまらんわ。誇り高き精神と鍛え上げられた技が激しく交差する様こそが最も美しいのであり、我の理想でもあるのだ』
「それで自我を持ったお人形に反逆されたら元も子もないな」
『ううう。これでお前らが向こう側に本気でついていたらと思うとぞっとするわ』
「それはないと思う」
拗ねていたマスターハンドは、ちょっとだけ指先の動きを止めた。
「確かにお前のことは気に入らないけど」
「でもタブーなんかと比べたら、圧倒的にこっちよねぇ。オリジナルがいるとはいえ、私達の生みの親だし」
「役立たずで出しゃばりだって以外に不満点はないしな。好き勝手できるし欲しいものは大抵もらえるし」
『……慰めたいのか蹴落としたいのか、一体どっちなんだ』
だだをこねる子供のようなマスターハンドに、1つだけ答えが返ってきた。

「本当に嫌いだったら、たとえ創造主でも全力で潰してるよ」