夜闇に覆われたその部屋にある明かりは、数本の蝋燭だけだった。
その蝋燭を囲むように、一同が車座になって座っている。
「……それで、その人は恐る恐る窓を開けたんだ」
フォックスが静かに語る。
「するとそこには……」
「グワー!」
「うわああああんっ!」
と、いきなり野太い奇声とリュカの泣き声が響き渡った。
「おいワリオ、関係ないところでリュカを泣かせるな!」
「今いいとこだったのに!」
リュカを驚かせたワリオは、ガハガハ笑いながら席に戻った。えぐえぐと泣き続けるリュカを、隣のネスとトレーナーが慰めている。
……と、何の前触れもなく誰かが倒れた。
「おい、どうしたんだ!?」
「もしかして、本当に幽霊が……!」
慌てる周囲をよそに、近くにいたゼルダは冷静にその人物の肩をゆすった。
「ほら、起きてリンク」
「……んー」
「寝てたんかい!」
何とも豪胆である。
「おい、怪談大会やってるときに居眠りなんかするんじゃねぇ」
「よし、ここは俺がとっておきの怖い話を……」
「却下よ。スネークの話は幽霊じゃなくて戦場の話だから」
沸き起こる非難に、リンクは頬をかきながらこう返した。
「えーと、じゃあ、俺が怖い話をするってことでいい? あいにく1つしか知らないんだけどさ」
その言葉に、皆は一度顔を見合わせて――といっても、暗すぎてあまりよく見えないのだが――やがて誰からともなくうなずいた。
「いいよ。でもスネークみたいに敵に襲われて怖かったーみたいな話はしないでね」
「うん。これは、俺がまだ村にいた頃の話なんだけどさ……」
リンクは淡々と話を始めた。



……5分後、約半数のメンバーが泣きながら部屋を飛び出し、残りの半数が真っ青な顔で硬直する様子を首をかしげながら眺めるリンクの姿があった。