楽しいお花見
「春といえばやっぱりお花見ね」
代表決定戦の後、ピーチが自分の城で花見大会をやりたいと言い出したので、打ち上げついでに全員がピーチ城にやって来た。一部ケーキや料理につられたメンツもいるが、いつものことだ。
庭には見事な桜が咲き誇り、ひらひらと花びらがそこかしこに舞っている。皆適当な場所に座って飲んだり食べたりしながら、のんびり花見を楽しんでいる。飲食しないG&Wは、桜の木に登ってご機嫌だ。彼の体重では枝が折れることはないので、誰も何も言わなかった。
「雪みたい。きれいだね」
「ね、知ってる? 桜の花びらを地面につくまでにキャッチできると、幸せになれるんだって。やってみようよ」
女の子らしいナナの言葉に、子供達は立ち上がった。
「いいね、やってみよう」
「じゃ、誰が一番いっぱいとれるか競争しよう!」
「ちょっと、やってもいいけど乱闘と桜の木を蹴るのはなしだからね」
「こっち来るな。あっちでやれ」
サムスとファルコに釘をさされ、子供達は少し離れた場所で駆け回る。
「しかし……あれは微妙ですね」
「あら、どうして? 可愛いじゃない」
首をかしげるピーチに、ゼルダが子供達を差して答えた。
「ピカチュウとプリンは除外して、ポポとナナは防寒着、トゥーンは薄手の長袖、ネスとリュカは半袖半ズボンです」
「そうね」
「季節感がないじゃないですか。あれだと」
「確かに……」
隣で紅茶を飲んでいたマルスもうなずいた。
「でも、別に気温がどうのは関係ないじゃん、俺達」
「リンク、気分の問題よ」
ゼルダが肩をすくめた。
「いや、こっちの方が花見気分はぶち壊しだぞ」
リンクが指差した先では、泣きながら重箱の中身をたいらげるスネークにフォックスが苦笑しながら別の重箱を差し出したり、カービィとデデデとヨッシーとクッパが早食い競争をしていたり、酔っ払ったファルコンとトレーナーがルイージに絡んで愛機とポケモンについて喋りまくっていたり、黙々と料理を食べるアイクの重箱にメタナイトがこっそり野菜を増やしていたり。ソニックとワリオの姿は既にない。ピットは仕事があるからと言って、ついさっき天空界に帰っていった。
「まともに花見してるのは、ガノンとルカリオだけですね……」
「賭けてもいい、二人とも他のに関わるのが面倒だから花見してる振りしてるぞ」
乱闘こそ始まらないものの、全くもってグダグダな花見だった。
「いいじゃない、楽しければ。……オリマー、ケーキ食べない?」
「いただきます」
昼寝していたドンキーとディディーのそばでピクミン達とまったりしていたオリマーは、「ケーキ」という単語に嬉しそうにやって来た。
「……おいピーチ、このグダグダな花見はいつ終わるんだ」
と、いい加減疲れたらしいガノンドロフがやって来た。リンクとゼルダが微妙な表情になるが、ピーチは笑顔でさらりとかわした。
「飽きたらよ」
「なら帰る」
「あら、そう。ごきげんよう、ガノン」
ひらひらと手を振るピーチに返事せず、ガノンドロフはそのまま帰っていった。
「『飽きたら』って……」
「いつまでって決めたって、帰る人は帰るし、残る人は残るもの。なら決めたって意味ないじゃない」
少し離れた場所では、スネークが段ボールにこもっていた。『起こすな』というメモが貼ってあるから、中で寝るつもりなのだろう。花びらキャッチに飽きた子供達が起こさないように段ボールに落書きをしている。
「あーあ、後で怒られるぞ」
面白がって煽るファルコとウルフ。サムスは相変わらず無表情だが、さりげなくケチャップをピカチュウに渡しているところを見ると楽しんでいるらしい。
「お花見って楽しいわね」
ニコニコと笑いながらいうピーチに、マルスとオリマーは密かに首をかしげた。
後書き
春なので花見な話。誰もまともに花見てないけど。
というか、自由すぎますこいつら。まぁ、元々自分らの創造主ボコっても罪悪感抱かない人たちですからねぇ。
Xのメンバーに足りないのは、集団行動をする能力だと思います。少人数ならともかく、大人数でまとまって行動できるのはタブーレベルの危機が迫ったときくらいでしょうね。