気だるい朝


瞼ごしに強い光が差し込んできて、マルスは片手をかざしてゆっくりと目を開いた。
少しだけ開いていたカーテンの隙間から、陽光が差し込んできている。……朝だ。
ふと視線をずらすと、しっかりと筋肉のついた肩のラインが目に入る。自分を抱きかかえた状態で静かな寝息を立てている人物は、すぐ横にある顔を見るまでもなく分かる。
「……アイク」
小さく名前を呼んでから、喉が少し痛むことに気付く。昨夜あれだけ喘いで水分をとっていないのだから、当然のことだろう。
とりあえず、片手しか動かない状況をどうにかする気力もないため、アイクでも眺めてみることにする。
自分をしっかりと包む、自分のものより多少がっしりしている腕。これであの重そうな剣を片手で振り回しているのだから驚きだ。
精悍な顔立ちは、熟睡しているため少し子供めいて見える。自分と少し色合いの似た髪は、邪魔にならなければ構わないらしくいつも毛先がはねている。そっとなでると、はねる毛先は少しだけ大人しくなった。
……そういえば、アイク自身もこんな感じだ。こちらの都合などお構いなしに寝室に連れ込まれてしまうし、そうなればなしくずしに朝まで抱かれてしまう。これに限らず、アイクについ流されてしまうのは……
(惚れた弱みってやつかな)
苦笑して、髪から頬へと手を滑らせる。半開きの唇に軽くキスすると、ゆっくりとアイクの瞼が開いた。
「おはよう」
「……あぁ」
普段よりも低い声で、少し寝ぼけたように返事する。
「んだ……もう朝か……」
マルスを抱いていた腕を放して、アイクは大きく欠伸をした。
「もうって……昨日あれだけやっておいて」
「あぁ?」
少しトロンとした目がマルスをとらえる。
「朝……っていうか、日のある時間帯だと、お前ヤるの嫌がるだろ」
「え……」
「剣ぶん回してまでえらく抵抗してたくせに、もう忘れたのかよ」
ガシガシと頭をかくアイクを、マルスはただ呆然と見つめていた。
……確かに、白昼堂々押し倒された時には流石に抵抗した。必殺の一撃まで繰り出した。……結局流されて寝室に引きずり込まれてしまったが、まさかアイクが覚えているとは思わなかった。
「ったく……しかし、起きるのだるいな。寝るか」
欠伸を一つして、アイクは再びマルスを抱き寄せた。
「え、ちょ」
「もうしねぇよ……寝るだけだ」
「もう朝なんだから……起きないと……」
マルスは抗議してみるが、アイクは聞く耳を持たずに目を閉じた。程なくして、寝息が聞こえてくる。
「……全く、もう」
抵抗するだけ無駄、か。
アイクの胸に顔を埋めて、マルスも二度寝することにした。
アイクの体温と匂いに包まれて、マルスの意識が心地よい微睡みに落ちるまでにさして時間はかからなかった。





後書き



アイマルいちゃいちゃです。今回は珍しく砂糖を吐いてません。

アイクは強引にマルスを引っ張りつつも、実はちゃんとマルスの話を聞いてたりするんですよね。あんまり止まらないけど(ぇ